恋の魔法なんて必要ない!~厭世家な魔術師と国外逃亡した私の恋模様~
暖かい日差しを吸い込んだ布団は、まるでお日さまの力を分け与えられたようだ。
見違えるほどぴかぴかになった部屋を見て、ひとり満足する。
夜まで待ってろよ、とふかふかの布団に呼びかけ、ドアをぱたん、と閉じ廊下に出た。
ここは図書室に近い小さな部屋。
ベッドと小さな机しかないけど、今日から私の部屋になる。
屋敷のの扉を一つずつ開け寝室らしき部屋を探し、ようやく見つけ出したのがこの部屋。
埃を被った棚と布の張られていない鉄製の古いベッドしかなかった、薄暗い部屋。
歩くと埃まみれになり床には足跡がつくほどだったけれど。
一苦労...いや、二十苦労くらいしてやっとこさ見つけ出した物置から、机二つとクロスとランプ、そして工具を拝借した。
丸い机の採寸をしてテーブル掛けを裁ち、布の余りを濡らして絞り、お部屋を磨き上げた。
寮の部屋より、ずっと満足の出来だ。
求めていたものは、まさにこういう感じだった。
ごてごてと飾り立てず、必要なものだけ最小限に。