すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜

 そう言うとカイルはベッドから起き上がり、テキパキと女性用の石鹸やクリーム、それにふかふかのタオルと寝る時用の服を出してくれた。どうやらさっきのお店で、これも買ってくれていたみたいだ。


「君が着替えている時に女性に必要なものを買ったのだが、肌に合わなかったら言ってくれ。では行ってくる」


 気づけばもう夕方。窓からは綺麗な赤い夕日が見えて、なんだか不思議な気分になってくる。朝にはあんなことがあったのに、今はカイルと一緒にいるなんて……。


(とりあえずお風呂に入ろう。今日はけっこう疲れた……)


 モタモタしてたらカイルが帰ってきちゃう。私は急いでお風呂場に入ると、備え付けの鏡で自分の顔を見た。


「――っ!」


 驚きのあまり大声で叫びそうになるのを、あわてて両手で押さえる。久しぶりに見た自分の顔は、メイクが落ちてボロボロのギトギトだった。


(ぎゃあああ! 信じられない! メチャクチャひどい顔してる!)


 そのうえ髪の毛はバッサバサで埃だらけ。不幸中の幸いは、マスカラやアイラインがウォータープルーフだったことだろうか。


(私のズボラ精神が役に立ったわ。お湯で落とせる化粧品ばかり買ってたから、とりあえずメイク落としがなくても良さそう)


 それでもこんな顔をずっとカイルに晒していたなんて! 「私のこともう一度好きになってくれないかな?」なんて乙女なことを考えてる場合じゃないよ! 本当に恥ずかしい……!


(とりあえず洗って綺麗にしなきゃ! きっと匂いもひどかったはず……)
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