【コミカライズ】そんなことも分からないの?
「いつ見ても綺麗な城だな!」


 リオネルが快活な笑みを浮かべる。イネスは彼と並び歩きながら、そっと首を傾げた。


「あの……リオネル様はこの城の歴史にお詳しかったりしますか?」

「歴史? ……いいや、知らん! けれど、歴史など分からずともこの城は美しい。それではダメか?」


 分からない。けれど、それのなにが悪いんだと笑うリオネルに、イネスの胸が温かくなる。


「いいえ、悪いことなどございません! 私も、城の歴史なんて分かりませんわ」


 大事なものは知識だけじゃない。そう思えることが素直に嬉しい。

 二人で城の中を寄り添って歩く。ここに来るときはいつも鬱々としていたが、イネスはとても晴れ晴れとした気持ちだった。


 と、そのとき、一人の女性を頂点に、数人の女性が反対側から練り歩いてくるのが見えた。
 中央に立つ眩い銀の髪、青い瞳の美しいその女性は、イネスの姉――――イザベルだ。


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