鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない

02 帰路

「わかった……約束しよう」

 高い上空で銀竜の背に乗り、過ぎ去っていく景色の様子から、とても速い飛行速度で進んでいるはずだ。何故今まで彼と普通に会話出来ているのかを不思議に思わなかったかは、わからない。

 キースの安心させるような低い声は、オデットの耳にちゃんと届いた。

 込み上げた一粒の涙が、すうっと頬を滑った。

「ありがとうございます……でも、どうか無理はしないでください。私は、自分がとても便利な存在で、強い力ある人に奪い合われる立場にあることは理解しています」

 魔法大国ガヴェアの中でも特に珍しい月魔法を使うことの出来る通称月姫と呼ばれるオデットの身柄に関しては、国の権力者たちの間で醜い争いが度々起きていた。誰かの血が流れたことだって、一度や二度ではない。

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