鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「……竜騎士様。私は、オデット。オデット・ナイトレイ。月の女神の加護を生まれ付き受け月魔法を使うことが出来るので、幼い頃に国に売られガヴェアに今までずっと珍しい能力を利用され続けて来ました。優しい貴方を騙して、困らせたくない。どうか……私の存在が邪魔になるのなら、遠い場所に打ち捨ててください。私は人生での中で一回だけで良い。自由になりたかった。それを叶えることが出来て、本当に嬉しいんです」

 オデットがじっと見つめてそう言えば、キースは一瞬だけ顔を強張らせ、ふっと微笑んだ。

「……君が、あの噂に聞くガヴェアの月姫か。俺も、女の子にどうか捨ててくれと言われて……真に受けて捨てるほど、自分で考えることを放棄したバカではない。俺は君が望めば、君を助けることも可能だろう。それだけの力を持ち、それなりの自由を許された役職にも就いていると自負している。オデット。それを聞いた上で、君は俺に何を望むんだ?」

 オデットの願い事は、物心ついた頃からいつもひとつだった。これまでにただ一度も叶えられることはなく、いつも窓の外に見える自由に焦がれていた。

 だから、迷うことなくその言葉は口から出た。

「竜騎士様……どうか。どうか、私を……私を意に沿わない身の上から、助けてください。どうか、お願いします。助けて」

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