鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「俺は、した約束を守ることにかけては有名でね。特に可愛い女の子とした約束は、忘れたことは一度もない……悲しんでいる誰かを見て可哀想だと言うことは、とても簡単だ。ただの同情で優しくすることは、俺はしたくない。オデットは、あの草原を走っている時、決して諦めてなかった。俺は絶望を前にしても、諦めない人間が好きだ。君の立場には誰の目から見ても同情の余地があり、強い誰かの庇護に頼ることは、別に恥ずかしがるようなことではないだろう。自慢じゃないが、俺は……」

 そこで言葉を止めて、キースはオデットをじっと見つめたので思わず息を止めてしまった。

(この人、自分の顔がどうなのかとか……わかっているのかな。近付いてくると、息をすることを忘れてしまいそう)

「……あのっ?」

 彼が無言で見つめていたのはそれほどの時間ではないと言うのに、オデットはその緊張感を我慢出来なかった。思わず言葉の続きを促した彼女に対して、キースはふはっと息をついて快活に笑った。

< 12 / 272 >

この作品をシェア

pagetop