鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「ヴェリエフェンディ竜騎士団団長で、先の王弟の息子でありスピアリット公爵家の嫡男でもある。さっきも言ったように、それなりの立場と力を持っている。俺の庇護下に君を入れると約束したのは、この俺だ。今まで激しい雨に見舞われて大変だったと思うがオデットは丈夫な傘の下で、これからはただ守られていれば良い」

 キースはあくまで紳士的に、鞍の上に横座りをしたオデットを自分の前に乗せて話していた。明かしてくれた彼の身分は王族の流れを汲むやんごとなき公爵家の出で、それも周辺国では最強と謳われる竜騎士団の団長だ。権力も持ち、実質的にも彼は強いんだろう。

(そんなに……凄い人に助けて貰えるなんて、幸運過ぎる……あの時、絶対に無駄だってわかっていても草原を走って逃げ出して良かった)

 どうせまた、逃げられないと自分に言い訳をして諦めていれば、もう叶わないままで終わってしまうところだった。あの一瞬の咄嗟の判断が、オデットを空の上まで連れて来てくれた。

「……悪い。少し待ってくれ。セドリック。誰が何だって?」

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