鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「どこより、安全って……」

 もちろんだが、オデットの居る家は堅固な要塞でもないでもない。裕福な庶民の住むような普通の一軒家に過ぎない。

 そんな疑問を皆まで言わせずに、アイザックは苦笑した。

「竜舎の近くにあるこの区画に住んでるのは、実は全員竜騎士でね。非番の奴らは家に居るだろうし。竜達がすぐ傍に居るとすれば、大軍でも来ない限りここからお姫様を連れ出すのは、不可能に近いから。という訳で、お姫様はここに居るのが、一番安全だって事」

 今日は夜勤明けだと言うアイザックは、オデットが初めて一人で焼いた膨らみの足りないパンを文句も言わず咀嚼しつつ難しい表情をした。

(そっか……ここに連れて来られた時に、この近くには、竜騎士たちが家を与えられてるって言ってたよね。竜騎士しか住んでなくて、すぐ近くには竜の巣である巨大な竜舎がある。だから、私は今までこうして無事で居られたんだ……)

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