鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 オデットを攫うためにやって来た不審者がもし万が一この場所に現れても、どうにか助けを求めることが出来たり竜騎士の内の一人だとしても誰かが不審者に気がつけば、彼らと心通じ合う事の出来る竜は群れを為してすぐそこに居る。

 必ず、助けに来てくれるだろう。

「……私。出来たら、キースの役に立ちたいんです。こうして、家の中で待っていても……何の役にも立たない」

 しゅんとしたオデットに、徹夜明けで思わず欠伸が出てしまったのか。アイザックは大きな口を片手で押さえて、なんとも言えない表情で言った。

「だから。あいつは、お姫様がこうして傍に居てくれるだけで満足なんだって。役に立つとか立たないとか、損得で考えるんなら。お姫様を最初から助けたりなんかしないだろう」

 自分の傍に居る誰かを損か得かどうかを天秤に掛け、損側に傾けば恋心など微塵も消えてしまうのだろうか。

 オデットはただキースが好きでそれだけで役に立ちたいと願ったものの。アイザックのような第三者から見れば、やはり自分はキースに損しか与えていないのかもしれないと、そう思った。

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