鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「……向こうからの抗議の使者も、特に何もなしですか。不気味ですね」

「ない。今まで全く動きがないとすれば、もうこの件では動かないだろう。稀有な力を持つオデットの事に関しても、言わないとすれば何かを企んでいそうだが……」

「こちらも警戒していたのに、肩透かしになって良かったのか、悪かったのか。わかりませんね……あっ! そうでした。礼をするのが遅れてしまって、すみません。オデットさん。この前には助けて頂きまして、ありがとうございました。流石にあれは死ぬかと思ったんで、翌日傷ひとつ消えてなくなってたんで夢だったのかと……えーっとパトリックに、何か……?」

 ナイジェルは慌てて傍に居た命の危機を救ってくれたオデットに礼を言おうとすれば、その彼女は水色の竜と見つめ合ったまま、動かなかったので訝しげな表情を浮かべた。

「あっ……せっかく、話し掛けて貰ったのに、ごめんなさい。この子、可愛いですね。パトリックって言う名前なんですか?」

「はい。俺の竜で……水竜です。あはは。この、可愛いお嬢さんは誰なのって、言ってますね。パトリック。団長の彼女だ。粗相すんなよ」

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