鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 ようやくハッとして目線を逸らす事が出来たオデットに、ナイジェルは苦笑しつつ答えた。

 キースは後ろから誰かに呼ばれたのか、ナイジェルに後を任せるように目配せをしてから去っていった。

「可愛い……鱗も……こんなに、大きいのに繋ぎ目が、ない?」

 オデットが嬉しそうにパトリックの大きな身体に近寄って、その身体を触れば、不思議な触感だった。冷たいような温かいような、柔らかいような固いような。とにかく、今まで触れたこともない感覚だった。

「そうですね。水中に潜ることも出来るので、水竜の竜鱗は落ちにくいようにはなっているらしいんですが、他の種類だとそれは、また違うかもしれません……オデットさんは、ガヴェア出身だったんでしたね。竜の存在がこうして身近なのは、ヴェリエフェンディで生まれ育った俺たちには、当たり前の事なんですが……ありがとう。お土産を買って来たから後で持ってくよ」

 ナイジェルは、パトリックに載っていた鞍を外してくれた騎士見習いらしい数人の少年に声を掛けた。嬉しそうな声をあげた彼らは、小走りに同じ方向に進んで行った。

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