鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「俺は、王へ君のことを報告してくる。セドリックを傍に付けるから、先に俺の家へ帰っていてくれ」

「……それは! 出来ません。こちらの陛下にご報告があるならば私もご一緒に」

 キースは、厄介な立場にあるオデットを庇護するための面倒を全部引き受けてくれると言った。ただ守られていれば良いと。

(嫌だ。この人を辛い立場に立たせるというのに、自分はただ安穏と守られているだけなんて……)

 オデットが決意している様子を見て、キースは彼女の二の腕を安心させるように摩った。

「あー……まぁ。気難しい我が王に会うことを、俺は特段お勧めはしないが、君には自分がしたい事をしたいようにする権利はある。アイザック! 後は頼む」

 手を挙げたキースとオデットが連れ立って歩き出しても、彼の部下である若い竜騎士たちは興味深げに見ているだけで何も言葉を発さなかった。

 上司が、仕事中に女の子を連れ帰ったのだ。何か、揶揄いたくもなるだろうに。うずうずするような好奇心の中にも、特に伝わってくるもの。

(ひしひしと、キース様に対する彼らの緊張感が伝わってくる……キース様って、恐れられているのかな)

 騎士団の中で団長と言えば、最高権力者だ。そんな彼が舐められていれば、戦闘時の士気に関わる。

 彼が優秀な指揮官である何よりの証拠なのかもしれない。

 余計なことを考えていたオデットが、前を見ずに躓きそうになったのをキースが腕を取り支えてくれた。

「……その重そうなドレスだと、歩きにくいだろうな」

 キースは苦笑して、自然な仕草で大きな手を差し出しオデットの手を包み込んだ。すっぽりと彼の手に自分の手がすべて収まってしまう安心感に、思わず息をついた。

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