鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない

03 国王

 二人が少しの時間待たされ謁見が許されたヴェリエフェンディ国王は、茶色の髭を蓄えた壮年の男性だった。高い位置にある煌びやかな玉座に座りこちらに向けた同色の目は、何の感情も映していない。

 見知らぬ城の中で戸惑うオデットを連れたキースが、堂々とした口振りで彼女をここまで連れてきた経緯を説明した。彼はオデットを一瞥した後、真正面に居るキースに視線を戻して言った。

「……また、厄介なものを連れてきたな。キース」

 まるで自分を捕食対象とした肉食獣に目を向けられたように感じたオデットは、一国を背負う王の声に背中にぞくりとするものが走ったのを感じた。

 まるで、自分の存在を塵芥のように感じてしまう。圧倒的な、君主たる者の気迫。

「そう言った理由で彼女は適切に保護し、俺の家で生活させます。陛下に対しては、これから万が一にも面倒になってはいけないので、一応ご報告だけをしておきます。もう一度言っておきますが俺は、彼女を手放すつもりはありません」

 庶民ならばそれだけでひれ伏してしまいそうな圧するような視線に対しても、キースは飄々として肩を竦めてそう返した。王の意向を窺うと言うより、ただ自分がオデットを保護下に置くと報告しただけのようだった。

 彼の言葉をただ聞いているだけのオデットの方がハラハラとしてしまうくらいに、キースの口振りにはこの国の王に対して何の遠慮もない。

(そういえば……先の王弟の息子ということは、国王陛下とキース様は従兄弟同士になるのかしら……?)

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