鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「もし、何も考えずに楽に生きたいと思う人間であれば、恐ろしい鉄巨人から逃げ回って居ませんでした。私は生きたい道を、自分のために生きたい。贅沢な生活を捨てても孤立無縁だったとしても、治癒の魔法を持つだけの人形のように扱われる場所から逃げたかったんです。そうしたら、そこには貴方が居てくれた。だから、私の考えは間違ってなかったんです」

「あー……まあ。考えは人それぞれだ。これだけは忠告しておく。もしオデットがこれこそが正しいという答えを見つけたと思っても、それを誰かに押し付けるのは絶対にやめた方が良い。誰しも心は、自由であるべきだ。だが、俺はオデットのそういう考えも好きだ。もしかしたら君はあれを逃げたと思って居るかもしれないが、戦略的撤退は逃げたとは言わないんだ。勝利への、近道だったと思え」

「せんりゃくてきてったい」

 オデットが鸚鵡返しに言葉を言って首を傾げたので、キースは吹き出しそうになって口を押さえた。ムッとして抗議の視線を向けたオデットに慌てて彼は、説明をした。

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