鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 平穏な日常だったのにと混乱する気持ちを抑えて、無表情のままこちらの様子を見ているセドリックと視線を合わせた。

「……ガヴェアが、国境付近で部隊を展開しているらしい。それ自体は良くある話と言えば、良くある話だった。オデットが来てからはなりを潜めて居ただけだ。だが、小競り合いとて、あちらは強力な魔法を武器としている。それに対抗するならば、こちらも竜騎士を出すより他ない。だから、キースはすぐに国境を守る砦へと何人か連れて向かった」

「けど、セドリックは……どうしてここに戻って来たの? だって。貴方はキースの竜でしょう?」

 突然の出来事にオデットの唇は震えていた。

 これから危険な戦闘が始まるのであれば、セドリックは契約しているキースの傍に居るべきだった。

 竜騎士は相棒の竜が居るからこそ、強い。素早く飛行して、移動することも出来る。竜にさえ乗っていれば、大抵の攻撃は守護だけで防ぐことも可能だ。あちらの放つ強力な魔法も、ひらりと身を躱す事も出来るだろう。

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