鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 竜騎士にとっての竜は、戦士にとっての剣に等しいはずだ。飛行船での戦い振りを見れば、キースは単独で居ても強い事は確かだろう。だが、良く使い慣れた武器を手放してしまえば、普段と同じ思うような動きが出来るかと言えば、それは難しいはずだ。

「……セドリック。行きましょう。貴方が私から離れられないのなら。私も、砦に行く。連れて行って。お願い」

 オデットが背中に留めていたエプロンの紐を解いて、背の高い彼を見上げればセドリックは珍しく面白そうに笑った。

「俺はお前をここに残せば、きっとそう言い出すと思っていた。別の竜に頼まれても、困る。だから、砦ではキースの指示通りに従ったんだが……お前は、キースを守るために何が出来る?」

 彼らと少なからずの時間を過ごしたオデットは、セドリックが自ら契約を与えた竜騎士のキースをとても気に入り大事に思っていることを知っていた。

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