鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「取り返したい存在。つまりお前が、この国に居るとわかっていると言うのに、あいつら……ガヴェアは、結局今まで何もして来なかった。あのイカれた一人の男も、禁じられた輸出品を持っていた悪党はこちらの国には何の関係もないとして蜥蜴の尻尾切り。お前を攫った魔法使いは逃げた後だったが……あれほどの魔法が使える実力を持っている奴らが、国に知られてない訳がない。キースは、この侵攻を何かがおかしいと感じているのかもしれない」

「罠かもしれない……?」

「そうだ。だから、俺にはこうしてオデットの傍に居るようにと頼んで来た。何か、嫌な予感がすると……キースの勘は、当たるんだ。だからこそ、あいつは窮地の中でも常に生き残って来た」

 キースが今まで為した戦功を、数えれば切りがない。そして、彼が団長になってから国を守る貴重な竜騎士は誰一人として死んではいない。

(嫌な予感が、あるというのに……私を守るためだけに、セドリックを自分の元から手放すなんて)

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