鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 もしかしたらもう会えなくなってしまうかもしれないと思って居た人の無事の姿を見たオデットは嬉しさの余り周囲のことなど気にせずに、彼の大きな身体に抱きついた。キースは驚いた表情をしていたものの、大きな手で優しく抱き締めてくれた。

「セドリックからの実況中継を心の中で聞いていたが、本当に生きた心地がしなかった。だが……ありがとう。オデットに、俺たちは命を救われたんだな……」

 背中をポンポンと叩きながらしみじみとして彼が呟いた言葉に、オデットは涙を堪えることが出来なかった。

「私っ……もうっ……ダメかと思って……もう、会えなくなるかと思っ……」

 俯いていたオデットはぐいっと顎が引かれたと思えば、すぐ近くに美しい紫色の瞳があった。

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