鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
(キースはそういう人だって、ちゃんとわかってた。けど、怖かった。離れて行ってしまうのではないかと、どこかで恐れていた。私にはそれだけの価値しかないと、ずっと思い込まされていたんだ。治癒の力があったって、なかったって。私は、私であることに変わりないのに)

「私は……キースにこうして出会えて、幸運でした。月の女神様と話した時に、キースと出会うことが出来たから。辛かった過去は、全部帳消しになって余りあるものだと、そう言う事が出来ました。だから、今では貴女に本当に感謝していると」

「……そう、思うか」

「思います。私以上に幸せな子は、きっと世界にいないと思います。だって、キースが自分のことを可愛い恋人だと言ってくれるんですよ」

 しごく真面目な顔をして彼の腕の中で顔を見上げるオデットに、キースは笑いかけた。

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