鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「はは……まあ、幸せの形は人それぞれで、誰かと比べるようなものでもないけどな。だが、俺は今世界で一番の幸せ者に違いないと思っている。可愛い恋人に、死ぬ覚悟を持って命を救われ愛されている。もし、オデットが来てくれなかったら……俺たちは、あの砦から出られずに死んでしまうところだった。オデットにしか、出来ないことだった。ありがとう……あの、セドリックが早口になって実況中継していたくらいの窮地に、怖かっただろうに良く勇気を出した」

「セドリックが……早口……」

 たまに自分の言い分を一方的に語る時以外、寡黙で言葉が少ななセドリックのそんな様子は想像もつかないとぽかんとした表情になった。

「あー……なんだか、引っ掛かるところが物凄く間違っているような気がしなくもないが。付き合いの長い俺でも驚くほどに、オデットが仕出かす何もかもにあいつが慌てふためいていたことは間違いない。だが、オデットのあの時の判断が正しかった証拠に、俺もあの砦に居た全員もこうして生きている。それで良い。何か、陛下にご褒美でもおねだりするか。あれだけの事をしてくれたんだから、きっと、なんでも聞いてくれるぞ」

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