鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「……あ? 別に構わないが、どうした?」

 その時にようやく、キースは少し驚いた表情になった。オデットのしようとしている事を、理解してくれたらしい。

(それも……そうだよね。私はずっと、キースにして貰っていただけだった。これからは、こういう事でも対等になれるようにしないと……)

 彼を言葉や仕草で色っぽく誘惑したりしなければいけない事はわかっているものの、だからと言って経験のないことを最初から上手く出来るはずもない。

 布を巻くこともなく裸体でどうしようかと思いあぐねて立ったままのオデットに、見かねて苦笑したキースは手招きをして言った。

「……おいで。そのままだと、寒いだろう」

 ようやくほっと息をついて、オデットは一度洗い桶から湯を流して浴槽へと入り込んだ。

 騎士団長のキースに用意された家は、大きい。他の竜騎士より特別に豪華な仕様という程でもないが、彼はお風呂が好きな事もあり大きな浴槽を特別に別注で頼んだらしい。

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