鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 先程の失敗を踏まえてふわっと触ったオデットは、顔を上げれば間近にある整い過ぎた容貌に見蕩れた。

「あー……それって、誰から聞いた?」

「えっと……」

 急にキースから上に立つ者特有の、有無を言わさぬ圧力を感じたものの。オデットの本能はこの情報を明かして仕舞えば、誰かに良くない事が起きるかもしれないと頭の中で警告を鳴らしていた。

 二人はしばし見つめ合ったまま、動かなかった。先に音を上げたのは、キースの方だった。

「まあ……誰かを、売るような真似は出来ないか。こういう話題が、特に好きな部下は何人か居るから、また鎌を掛けてみるわ。それでは、早速。男の気持ち良い事を、俺が知らない内に誰かから学んだ、可愛いお嬢さんのお手並み拝見と行こうか。両手で、ゆっくり優しく握ってくれ。敏感だからな」

 彼に言われた通りにそれを擦ると、良く出来たとばかりにキースは満足気に微笑んだ。

「上下に、擦って……そう。ゆっくりと。手が疲れたら、もうしなくても良い。俺はこうしてくれようとしてくれた気持ちだけで、それだけで十分なんだ」

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