鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 だからこそ、歴代でも優秀と呼ばれ、部下全員に対し底抜けに優しかった彼よりも、自分は仕事をこなせるようにならねばと必死にもなれたのだ。

 最強と名高い竜騎士団長の肩書きは、誰もが思っていた以上に良い効果を産んだ。それを持っているキースに逆らおうなどと、普通の頭脳を持っている人間であれば決して思いやしない。

 力を持つものに踏み潰されることを望む者は、それに当て嵌まらないかもしれないが。

 そして、輝かしい戦功を立て、数多くの優秀な部下を率いる常勝の指揮官と呼ばれれば、より周囲からの雑音は少なくなった。逆にお前は何をしたと言われれば、誰しも口を閉ざすしかないからだ。

 だからこそ、キースはこうして何事もなかったような平然な顔をして、針の筵に座り続けることが出来ている。


◇◆◇


 同盟を結ぶ隣国のとある王弟とは、若くして騎士団長の肩書を持つキースとは立場が似ていることもあり、比較されることが多かった。

 だが、あちらは戦闘においての天賦の才能を持っているのに対し、キースは昔から勘が不思議と働いた。

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