鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 竜に選ばれるための前段階としての竜騎士候補生になるためには、騎士学校時代に乗り越えなえればならない高い壁は数多かった。だが、若かったキースは自身の不遇に我慢ならなかった。斜に構えていた騎士学校時代には、とてもあんな風に真面目に勉強をしていたとは言えない。

 可愛らしい色の羽根ペンを使ってせっせと勉強に勤しむオデットの姿に、キースは自然と目を細めた。

 あれくらいのひたむきさで学ぶことを続けることが出来れば、彼女はきっと自分のなりたい自分へ変わっていけるはずだ。

(けど俺は。オデットが、別に何をしてくれなくても。別に良いんだけどな……邸の管理なんかは、優秀な執事を見つけて雇えば、どうとでもなるし……オデットを、何か面倒に巻き込みたくもないんだが。行きがかり上、対抗馬っぽい顔をしているだけで。心労だけが重なる王になりたいとは、かけらも思ってないしな……)

 複雑な立ち位置にある自分を手伝うためにと、オデットがせっせと必要な勉強をして頑張ってくれているのは良いのだが。

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