鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「れっ……恋愛……そんな、私なんて滅相もございません」

 顔を赤くしたオデットに、アイザックは意外な表情を見せた。

「……あれ? 違うのか? あいつはいつになく上機嫌だし、こんなに一人を特別扱いしているところを見たことがない。俺はてっきり、そういう事だと思っていたが。まあ、そういう事で、あいつも結婚相手を選ぶ事については、苦労をしているだろうな。庶民では相手に負担が大きすぎるし、貴族で選べばまた力を持ち過ぎ、それはそれで周囲に軋轢を生む。だが、不思議な能力を持つ君となら誰も文句は言わないだろうし、この国での政治的な後ろ盾もない。本人も気に入っているのなら、理想的だ」

 アイザックはキースとオデットが恋仲であることを前提に、彼と付き合う上での忠告をしてくれようとしていたらしい。

 あてが外れたと言わんばかりの変な表情になってしまったアイザックに、オデットは稀有な能力を現在持っているとしても、とても自分がキースのような男性と付き合える人間ではない事を伝えよう口を開いた。

「あっ……あの、あの……こういう事を男性に、お話しすることはどうかと思うんですが……」

「……ん?」

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