鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「こうして何も知らない俺たちが想像するだけでも、非常に窮屈な身の上だ。王位簒奪など本人は望んでもいないのに、周囲はそれをやれる存在である事を望んでいる。望まぬ立場は、本当に苦しかったろうな。あいつは自分の力だけでも、竜騎士になれると見せたかったのかもしれない。これも、俺の想像でしかないが」

「だから……私の事情も、わかってくれたんですね」

 産まれたというだけの立場で、大きな苦難を背負う。だから、キースは最初からオデットに同情的で、王にも自分の責任で匿うと言ってくれたのだ。

 そんなことをしても、彼には何の得もないというのに。

(キース様はそういう思い通りにならなかった過去の自分と私を、重ねているのね。彼が生まれ落ちる先を選べなかったように、私の能力だって……)

「……なあ。キースと付き合ったり結婚すれば、自ずとあいつの事情に巻き込まれる事になる。確かに女性から見て魅力的な男で、特殊な事情を持つ君を守れる数少ない強い存在だ。だが、もしあいつと恋愛をする事を望むなら、それを知っておいた方が良い。覚悟もないのに、巻き込まれれば致命傷を負うぞ」

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