鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない

 顔を輝かせて期待の声を上げたオデットに、キースは微笑んで頷いた。

 オデットは今までずっと、自由になりたかった。自由をようやく手にしているというのに、家に閉じ籠りっぱなしではいけない。これから、自分にだって、普通の女の子のような日常を味わうことが出来るのだとそう夢見ていた。


◇◆◇


 ヴェリエフェンディの王都は、とても盛況だ。

 お伽話の挿絵に描かれるような壮麗な王城を含めて、芸術的な美しさを誇る街には竜が飛ぶ。他国や大陸からわざわざ訪ねてやって来る旅行客も多いし、最強と謳われる竜騎士団が居るから、そうそう敵は攻めてこない。平和が約束された国であるならば商人だって、計画的に商売をやりやすい。人がこうして多く集まるのも、仕方のないことだった。

「キース様、あれは何ですか?」

 オデットが指差した先に見えるのは、窓から美しい花飾りを下げた瀟洒な館だ。店構えからして大きなお店のようでもあるが、貴族の館のようでもある。

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