鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 まるで彼が彼ではないような気がして、怯えた様子を見せたオデットにキースは眉を寄せた。

「あー……すまない。わかっていると思うが、君に怒ってる訳ではない。俺が怒っているのは、俺自身だ。守ると約束したのに、君を守れなかった……ここに来れたのは、斥候が一人紛れ込んでいたとすれば、絶対にその後の様子を報告する係である連れが居ると睨んだ。その一人をどうにか見つけて、ここに連れてくるように脅した……オデットを早々に見つけられて、良かった。この船の中一室一室を探すのは流石に骨が折れる。どこにいるかは流石に教えてくれないだろうしな」

 キースは苦笑して、オデットの腕を安心させるように摩った。

(良かった。自分で部屋を出て来たから、すぐにキース様に会うことが出来た。勇気を出したのは、無駄じゃなかった)

 熱い思いが心に込み上げて来たものの、オデットは自分達のいる状況を思い出して顔を曇らせた。

「キース様、でも……」

 ここは、空の上だ。

 脱出するのは難しく、こんなに強い彼だとしても一人では危険があるかもしれない。心配したオデットに、キースは面白そうに微笑んだ。

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