鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「ふはっ。オデット、君は俺が誰だと思ってる?」

 彼は首を傾げ謎かけをするような質問に、オデットは戸惑いつつも答えた。

「キース・スピアリット様。ヴェリエフェンディの先の王弟の息子で、ヴェリエフェンディ竜騎士団の団長で……」

「そう。ご名答だ。竜騎士である俺は、多少離れても自分の竜のセドリックと心が通じている。あいつにこの船の位置を知らせたから、急がせたひよこ共もそろそろここにやって来るだろう」

「……ひよこ? もしかして……」

 その時に折良く大きな音がして、厚い金属の壁を鋭い爪で紙のように破り、真紅と紺の竜が先を争うように首を出した。二匹は、キースに向けて褒めて欲しそうな顔をしてキラキラとした目で彼を見つめている。

「ワーウィックもクライヴも、良くやった……だがもう少し、場所は選べよ」

 竜から降りた赤い髪の竜騎士が、長槍を構えて周囲を警戒するように見回した。もう一人のこの前に会ったブレンダンがキースに駆け寄って、二匹の竜は大きな口を開けてブレスを吐きこちらを窺っている様子だった敵を威嚇した。

「ブレンダン。何騎いる?」

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