だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
「それにしても十河さん、本当にお忙しいのね。倉本さん、新婚なのに寂しくないの?」

 余計なお世話だと答えようとしたが、その前に有沢さんが笑顔で続ける。

「あ、そうね。契約結婚だから平気なのかしら?」

 一瞬、なにを言われたのか理解できず耳を疑う。平静を装って否定しないと、と思うのになんて返せばいいのかわからない。

 目を見開いたまま硬直する私に、有沢さんは勝ち誇ったような顔を向けてくる。

「うちね、鎌田建設さんとも繋がりがあって、社長のお孫さんである寧々さんとも知り合いなの」

〝寧々さん〟で思い出す。たしかこの前、パーティーで紹介された久弥さんの同僚でもある鎌田寧々さんのことだ。

「彼女から聞いたの。十河さんにとって結婚は損得勘定で考える割り切ったもので、メリットがないと結婚なんてしないって。だから倉本さんとの結婚もおそらく理由があるんでしょ? だって十河さんはもともと寧々さんと結婚話が出ていたそうよ」

 最後に爆弾を落とされ、さすがに動揺を隠せない。

 結婚話って? 久弥さんと鎌田さんは付き合っていたの?

 声には出せずにいたら、有沢さんが満足そうに続けていく。

「寧々さんから結婚を持ちかけていたんですって。十河さんもまんざらではない反応だったけれど、突然結婚するって告げられたそうよ。裏があるって思って当然よね。彼女は十河さんの欲しいものを全部あげられるのに」

「欲しい……もの?」

 思わず聞き返してしまった。胸が焼けるように熱くてヒリヒリする。
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