だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
 仮に私が彼女のなにか癪に障ることをしたのだとしても、この態度はひどすぎる。

 すると有沢さんの顔からはすっと笑みが消え、怖い顔で私を睨みつけた。

「当たり前じゃない。自分が可哀想だからってみんなに気を使わせて、優遇してもらって。大っ嫌いよ、あなたみたいな人」

 彼女の言葉すべてが鋭いナイフのように、容赦なく私の心に刺さる。呼吸困難を起こしそうなほどに。

 けれど身に覚えがない。家庭事情は友人とはいえ極力人には話さなかったし、高校や大学の進学には特待生制度を利用したが、実力あってのものだと自負している。

 そういった説明を冷静に返しても有沢さんは眉ひとつ動かさない。

「周りが勝手に憐れんで優しくしているだけって言いたいの? こっちは生まれたときからこういう世界で生きていくために努力しているのに。あなたみたいな人間が、町原くんや十河さんに近づいてほしくないの。対等とか幸せになれるとか勘違いしないでね」

 一答えたのに対し、十の毒で返される。彼女とは話し会うだけ無駄だ。分かり合える余地なんて微塵もない。

 もはや契約結婚なのを否定するのもできなかった。言ったところで信じてもらえないし、なにより事実だ。

「お引き取り願えます?」

 震える声で伝えると、有沢さんは不意に私をじっと見つめてくる。彼女の視線の意図が読めず、居心地悪さだけを感じた。

「倉本さんの髪、ずいぶん長いけれど縮毛矯正かストレートパーマでもかけているの?」

 突拍子のない質問に虚を衝かれる。一体、なんなのか。
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