だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
「会長、話した通りです。彼女、高校の頃もわざわざ家が病院をしている私の婚約者に近づいてきて……昔からそうなんです。母子家庭で家が苦しいからってそういう男性ばかりに声をかけて」

 有沢さんが光子さんになにを話していたのか察しがつき、嫌悪感と怒りに顔を歪める。

「違っ……」

「彼女のお母さまが倒れてすぐに彼女は久弥さんと結婚して、その後、お母さまは大きな病院に移って手術されているんです。久弥さんの援助で」

 口を挟もうとしたが、続けられた彼女の言葉に息を呑んだ。

 すると有沢さんは私を見て笑う。皮肉と侮辱混じりの冷たい笑みに背筋が震えた。

「あまりにもタイミングがよすぎないかしら? それに久弥さん、鎌田建設の社長の娘さんとご結婚されるつもりだったって聞きましたけれど」

 鎌田さんとの件まで持ち出され、嫌な汗が噴き出す。久弥さんと鎌田さんはどこまで結婚について話が進んでいたんだろう。光子さんは知っているの?

 強気に出ようとした態度が一転し、心臓が早鐘を打ちだしなにも言えない。

 ああ、あのときと一緒だ。町原くんのお母さんに投げかけられたあの言葉。

『そう。でもこうやって疑われてしまう環境にあるのは、不幸ね。あなたに息子は荷が重すぎると思うの。世界が違いすぎるもの』

 しかも今は、完全には否定できない。久弥さんから持ちかけられたとはいえ、母の病気を治すために彼と結婚したのは事実だ。私たちは愛し合っているわけじゃない。

 言い返さない私に、有沢さんは勝ち誇った表情で光子さんに訴えかける。

「大事なお孫さんのことですもの。僭越ですが相手についてはきちんと調べた方がよろしいかと」

 さっきから光子さんは黙ったままだ。有沢さんの話をどう受け止めたのか。取り繕わないと、と思うのに光子さんに嘘をついている以上、なんて言えばいいのかわからない。

「瑠衣さん」

 光子さんに名前を呼ばれ、肩がびくりと震える。私はおそるおそる光子さんの顔を見た。
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