だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
 翌日、仕事終わりに光子さんのところに顔を出そうと病院へ向かう。

 忙しい久弥さんの代わりも兼ねているが、私自身光子さんに会うのはとても楽しみだ。光子さんから聞かされる久弥さんの子どもの頃の話もとても貴重だ。彼は自分のいないところで話題にされるのは面白くなさそうだけれど。

 ふふっと笑みがこぼれそうになる。

 光子さんは薬が効いて治療がうまくいっているようで本当によかった。彼女には長生きしてほしいと心から思う。

 ただ、問題は私と久弥さんとの関係だ。どう考えても今のままなのはよくない。久弥さんだって、私の態度を不審に思っているだろう。

 私は強く決意する。

 彼との関係にやきもきして、嫉妬して……久弥さんとの生活に支障が出るなら、いっそのこと自分の気持ちをはっきりと彼に伝えよう。久弥さんの考えも聞きたい。

 その結果、この結婚が解消になるならそれはそれで彼を諦める、いいきっかけになるかもしれない。

 でも……もしも久弥さんと別れたとして、彼としていたみたいに別の誰かと温もりを分かち合うことができるのかな?

 不安にも似た黒い靄が心にかかり、軽く両頬を叩いて気合いを入れ直す。光子さんに心配をかけさせるわけにはいかない。

 笑顔を作り、光子さんの病室に向かう。いつも通りノックをして、中から返事があってドアを開けた。

「光子さん、こんばんは」

 笑顔で挨拶をした瞬間、目に飛び込んできた光景に凍りつく。一瞬、夢か幻か状況が理解できない。

「な、ん……」

「あら、噂をしていたらご本人がいらしたわ」

 光子さんのそばには、昨日私を尋ねてきた有沢さんの姿がある。光子さんの表情は硬く、目が合ったが彼女の感情は読み取れない。代わりに有沢さんが微笑みながら口を開く。
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