だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
「気づいたときにはもう手遅れだと言われたんだ。ただ、年齢的なものもあって進行はそこまで早くない。できる手はすべて尽くすつもりだが、今のままでは……」

「そん、な……」

 光子さんは知っているの? どんな想いで寄付しようと思ってくれたの?

「本人にはなにも伝えていないが、薄々と気づいている感じはある。体力的にも大がかりな手術は厳しく、腫瘍を小さくする薬を試しているが、どれもいまいち効果は得られていない」

『退院されたら、光子さんとご一緒させてください。楽しみに待っていますから』

 あのとき、私の提案に光子さんは一瞬悲しそうな顔をしたのを思い出す。久弥さんに病状を聞いた際に曖昧に返されたのも、簡単に第三者に教えるわけにはいかないと判断したのだろう。

 でも、だったらなぜ今私に教えてくれたの?

「祖母は君を気に入っている。そして祖母はずっと俺が結婚しないのを心配しているし、いまだに会うたびにその話をしてくる。だから」

 そこですべて繋がった私は、あれこれ考える間もなく声をあげた。

「お断りします。結婚は愛する人とするべきですよ」

 つまり久弥さんは、光子さんを安心させたいために、期間限定の相手として私に結婚を申し込んできたんだ。彼女が私を気に入っているという理由だけで。

 私の言い分に、久弥さんは不快そうに眉根を寄せた。

「あいにく結婚願望はないし、そんな相手もいない。もちろん無償でとは言わない。それなりの報酬は支払う」

「そういう話ではありません。そもそも光子さんを騙す真似はできません」

 頭の芯が冷えていき、それは口調にも表れる。
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