だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
「おばあさまを想う気持ちはわかります。でも光子さんが気に入っているからって、嘘をついてまで私と結婚したと告げても光子さんは喜びませんよ」

 きっぱりと彼を見据えて返したが、久弥さんはものともしない。

「最後まで突き通す覚悟はある。祖母の心労をひとつでも減らしたいんだ」

 彼の目には言葉通り迷いはない。久弥さんは自分の気持ちをすべて無視してでも、光子さんのために結婚しようとしているんだ。

 決意の固さを目の当たりにし、これ以上自分の意見を押し付けても無駄だと感じる。

 そこでデザートが運ばれてきたので会話は一時中断した。

 サツマイモのタルトとりんごのシャーベットは甘さと酸味のバランスがちょうどいい。ついさっきまで純粋に出される料理を楽しんでいたのに、今は集中できない。

 最後のコーヒー飲み終え、私たちの間にほぼ会話はないまま店を出た。

「ごちそうさまでした。お料理、とても美味しかったです」

 駐車場に向かう前に、頭を下げお礼を告げる。そして彼がなにか返す前に続ける。

「先ほどのお話、他の人を当たってください。私はお受けできません」

 私の結論は変わらない。ただ、彼の考えを否定する権利も私にはない。久弥さんみたいに素敵な人なら、それこそお金を払わなくても、諸手を挙げて協力してくれる女性はきっといくらでもいる。その中に光子さんが気に入る女性だっているだろう。

 帰りはタクシーを掴まえようと彼に背を向けようとしたときだった。
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