まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え①~人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~
 傍目から見ればそんな良くわからない状況下で、近くに居た人も集まって大騒ぎになっていたそうだ。

 だから、子竜さんが来てくれた時には、もう既に春くんを運ぶための救急車と事件の取り調べのために警察は呼ばれていた。

 そのまま、意識を失って倒れていた春くんは、病院へと連れて行かれてしまうところだった。出発寸前の救急車に子竜さんと連絡を貰った私は一緒に乗り込んで、春くんは医者の治療を受け今に至る。

「春くん……」

 そっと小声で呼ぶけど、やはり意識を失ってしまった彼の反応はない。

 子竜さんは理人さんか雄吾さんがどちらかが来るまで居ると言って、今も一緒に病室に居て離れて座っていた。

 けれど、彼は必要なこと以外何も言わずに、ずっと黙ったままだ。

 ガチャリとやけに大きく聞こえたノブの音がして、病室のドアが開いた。

「透子……!」

 それは、慌てて駆け付けたらしい雄吾さんだった。

 座っていた私は立ち上がって彼に駆け寄り、胸の中へと抱きついた。安心感が心の中に溢れ出て、今まで我慢していた涙がこぼれ落ちてしまった。

「雄吾さん、春くんが……っ」

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