君とふたりで。



そんな言葉がぐるぐると頭の中を駆け巡る。


あたしはともかく…。


気持ちが同じになっていないうちに付き合っても、相手を傷付けることになる。




「本当に良いんですか」


「ん…何が?」




あたしは抱き締められた状態のまま顔を埋め、静かに問い掛ける。



でも、




「いーんだよ、好きになってもらえるように頑張っから」




意志の強い、真っ直ぐで優しい目をして言った。



それなら、あたしもこの人のことをしっかり見なきゃ。



強く思った。
















その日から、あたし達は付き合い始めた。




毎日くだらないことでメールをしたり、一緒に帰ったり。



あたしが付き合うってのがまずありえないことで。



なんだか抵抗があって、付き合っていることは誰にも知られないようにしていた。



ただ、香織と唯だけにはちゃんと言っていた。



そしたら2人共、「やっぱ付き合ったのかぁ!」とか「おめでとーっ」とか、自分のことのように喜んでくれた。



もちろんチカにも報告した。




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