君とふたりで。



そもそも、話し相手があたしじゃ申し訳なさ過ぎる。


「すいません」と力なく呟き、そのまま少し距離を空けて隣に座る。



“ハルさん”は体勢をあぐらに変え、後ろに手をついた。



…やっぱりこの人、何をしても綺麗。




「──あ、こないだは送ってもらって…ありがとうございました」




話題がなくて咄嗟に思いついたことを言う。


そしたら“ハルさん”は口元をフッと緩めて、「お前、謝ったり礼言ったり忙しいな?」って。



…あたしが笑った顔を見たのは、たぶんこの時が初めて。


もしかしたらバカにした笑いかもしれないけど。


でも、普段あまり表情を変えないこの人だから、なんだか嬉しくて。


また胸がキュッとなった。




「あのあと怒られたろ」


「あ…でもアイスもらったんで全然平気でしたよ!」


「なんだそれ」




とりとめのない会話だったけど、あたしには十分だった。


だって、ちゃんと話せてるんだもん。




「ハルさんて…」




と切り出したところで、ハッとした。



あたしみたいな凡人が、馴々しく“さん付け”で呼んでしまった!!




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