最強総長の愛するボディガード
未練がましくもそう反撃するお父様の言葉を、蒼凰さんは落ち着いた声で遮る。
「あなたはそこまでしてご自身の醜さに気が付きたくないんですね。ならば私は、彼女を愛する婚約者として、彼女をこの家から切り離すしかありません」
「はい?婚約者?一体なんのことを……」
私も「この家から切り離す」とはどういう意味だろうと、不思議に思ったその瞬間。
蒼凰さんはスーツの内ポケットからナイフを取り出し、自分の左の手のひらを切りつけたのだ。
溢れ出てくる血が、床に雫となって落ちていく。
え……
「あ、蒼凰さんっ……!」
「残念、俺が怪我したから、この任務は失敗ですね」
「なっ……」
確かにこの任務は、たった今失敗になった。
けれど私は、蒼凰さんの手が心配でそれどころではない。
「蒼凰さん、血が……早く手当を……っ」
「大丈夫だよこの程度。それよりごめんね、心羽ちゃんの努力を無駄にしちゃった。だけどそうしてでも、俺は心羽ちゃんにこの家に囚われて欲しくないんだ。心羽ちゃん、うちにおいで。そしてずっと、一緒にいよう」
「え……」