最強総長の愛するボディガード

一時間後。
車から降りた私は、目の前の建物に開いた口が塞がらなくなってしまう。



えっ、こ、これ……?
お偉いさんなのは分かってたけど、どれだけ凄い人なの?
うちなんか比べ物にならないほど、大きな邸宅……



アイアンの門扉の奥に広がる庭園。
それは多種多様の植物によって彩られている。
白い大理石のガゼボは存在感を持ち、西洋にいるような錯覚に陥りそう。
そして一番目を引く邸宅は、グレーやダークブラウンといった配色から高級感があり、屋上を含めると六階まであるみたい。
とても暴走族と関係のある人が住んでいるとは思えない豪邸だ。
ゆっくりとインターフォンを押そうとすると、それよりも前に門扉が自動で開いた。



入っていい、の……かな?



まだこの豪邸のことで頭がいっぱいだけど、私はボディーガードとして“仕事”をしに来たのだ。
きちんと礼をして、敷地に足を踏み入れる。
庭園を横切って行くと、取っ手が無い壁のような大きな扉の前にたどり着いた。
きっとここが正面玄関だろう。
そう予想した瞬間にはその大きな扉がスライドし始め、邸宅の中が見えてきた。
完全に玄関扉が開くと、そこにはスーツを身にまとった外面の良い中年男性が佇んでいた。
そして綺麗なお辞儀をして、上品な声、話し方で言う。



「お待ちしておりました、涼宮心羽様。私は蓮見家の使用人の橋渡(はしわたり)と言います。以後お見知り置きを。当主とお坊ちゃまの元へは私がご案内させていただきます。ではお荷物をお預かり致します」
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