新そよ風に乗って ③ 〜幻影〜
「お前は、いったい俺に何が聞きたい」
エッ……。
そう言い掛けた高橋さんの左手が、優しく私の右頬に触れながら静かに言葉を続けた。
「営業2課の宮内は大学の後輩だが、それ以外に何だったら気が済むんだ?」
「そ、それは、その……」
暗闇であっても、何となく高橋さんには見透かされそうで、寝ながら必死に呼吸を整えようと試みるが、なかなか上手くいかない。
それどころか、だんだん目が慣れてきたので、高橋さんの視線すら感じられるまでになっていて、この落ち着かない浮遊している心を読まれてしまっている気がした。
「すみません。何となく、その……」
「お前は、そんなに俺の言ってることが信じられないのか?」
そんなことない。
あっ、声に出して言わなきゃ。
「そ、そんなことないです。そんなこと……」
思いっきり首を横に振ったので、ベッドがゆらり、ゆらりと揺れ始めたので、高橋さんが私の右腕を左手で押さえて止めた。
「ごめんなさい。本当に、そんなつもりじゃ……」
すると、高橋さんは黙ったまま首を振ったことで乱れてしまった髪を、またそっとかき分けてくれて、それが何とも私には落ち着けるような気がして、目を瞑ってその感触を確かめていた。
「分かったなら、もう寝ろ」
エッ……。
高橋さんは、そう言ってベッドから立ち上がり、優しく布団を掛けてくれている。
もう慣れてしまった暗い寝室で、はっきりと高橋さんの顔を確認する事が出来た。
「高橋さん?」
高橋さんは、枕元の脇にしゃがんで先ほど抱っこされた時に、咄嗟に持った着替えの入った袋を拾ってくれていた。どうもベッドに寝かされた時に、無意識に落としてしまったみたいで、その袋をサイドテーブルの上に置いてくれると、枕元に片肘をのせて右手で頬杖をつきながら、左手で私のおでこを撫でてくれた。
「ゆっくり休め。夕べも、あまり寝てないんだろう?」
「えっ? あの……。高橋さんは、まだ寝ないんですか?」
エッ……。
そう言い掛けた高橋さんの左手が、優しく私の右頬に触れながら静かに言葉を続けた。
「営業2課の宮内は大学の後輩だが、それ以外に何だったら気が済むんだ?」
「そ、それは、その……」
暗闇であっても、何となく高橋さんには見透かされそうで、寝ながら必死に呼吸を整えようと試みるが、なかなか上手くいかない。
それどころか、だんだん目が慣れてきたので、高橋さんの視線すら感じられるまでになっていて、この落ち着かない浮遊している心を読まれてしまっている気がした。
「すみません。何となく、その……」
「お前は、そんなに俺の言ってることが信じられないのか?」
そんなことない。
あっ、声に出して言わなきゃ。
「そ、そんなことないです。そんなこと……」
思いっきり首を横に振ったので、ベッドがゆらり、ゆらりと揺れ始めたので、高橋さんが私の右腕を左手で押さえて止めた。
「ごめんなさい。本当に、そんなつもりじゃ……」
すると、高橋さんは黙ったまま首を振ったことで乱れてしまった髪を、またそっとかき分けてくれて、それが何とも私には落ち着けるような気がして、目を瞑ってその感触を確かめていた。
「分かったなら、もう寝ろ」
エッ……。
高橋さんは、そう言ってベッドから立ち上がり、優しく布団を掛けてくれている。
もう慣れてしまった暗い寝室で、はっきりと高橋さんの顔を確認する事が出来た。
「高橋さん?」
高橋さんは、枕元の脇にしゃがんで先ほど抱っこされた時に、咄嗟に持った着替えの入った袋を拾ってくれていた。どうもベッドに寝かされた時に、無意識に落としてしまったみたいで、その袋をサイドテーブルの上に置いてくれると、枕元に片肘をのせて右手で頬杖をつきながら、左手で私のおでこを撫でてくれた。
「ゆっくり休め。夕べも、あまり寝てないんだろう?」
「えっ? あの……。高橋さんは、まだ寝ないんですか?」