新そよ風に乗って ③ 〜幻影〜
ベランダにいたんだ。
「あっ。あの、そんなことないです。何か、目が覚めちゃって……。高橋さん。まだ起きて仕事してらしたんですか?」
「ん? ああ、ちょっとな」
「昨日も昼間、仕事されていらっしゃいましたよね。そんなに、お仕事大変なんですか?」
分かっていた。今、私が聞いていることは、愚問だということを。
「フッ……。そんなことはない。仕事が恋人だから」
「えっ? 仕事が恋人……ですか?」
「ああ、そんなところだ」
仕事が恋人って……。
高橋さん。
高橋さんは、彼女はいないの?
「もしかして、高橋さんは、彼女いらっしゃらないんですか?」
「……」
ハッ!
どうしよう……。
思っていることを、口に出してしまった。
黙っている高橋さんの顔を恐る恐る視線を上げながら見ると、思いっきり目が合ってしまった。
「す、すみません。余計なこと……」
「フッ……。もしかしなくても、いない」
嘘だ。
「ええっ? い、いないんですか? 高橋さん。彼女、いらっしゃらないんですか?」
「お前さあ、そう連呼しなくてもよくないか?」
うっ。
「あっ、すみません。つい……」
「だから、さっきも言っただろう。仕事が恋人だから」
何故?
何で、高橋さんほどの男性が……。
「あの……。それは、彼女と別れたばかりだからですか? それとも、誰か好きな方がいらして片思いとか……ですか?」
自分でも、大胆なことを聞いてしまっていると思う。でも、何かが私を突き動かしていて、聞かずにはいられなかった。
「残念ながら、そのどちらでもない」
どちらでもない?
すると、高橋さんはテーブルの上に置いてあった、飲みかけだったらしい缶ビールを一口飲んで、ポケットから煙草とライターを出して煙草に火を点けると、テーブルの上に煙草とライターを置いた。
「俺は、恋愛に向かない男だから」
エッ……。
高橋さん?
「あの、それは、どういう意味ですか?」
「あっ。あの、そんなことないです。何か、目が覚めちゃって……。高橋さん。まだ起きて仕事してらしたんですか?」
「ん? ああ、ちょっとな」
「昨日も昼間、仕事されていらっしゃいましたよね。そんなに、お仕事大変なんですか?」
分かっていた。今、私が聞いていることは、愚問だということを。
「フッ……。そんなことはない。仕事が恋人だから」
「えっ? 仕事が恋人……ですか?」
「ああ、そんなところだ」
仕事が恋人って……。
高橋さん。
高橋さんは、彼女はいないの?
「もしかして、高橋さんは、彼女いらっしゃらないんですか?」
「……」
ハッ!
どうしよう……。
思っていることを、口に出してしまった。
黙っている高橋さんの顔を恐る恐る視線を上げながら見ると、思いっきり目が合ってしまった。
「す、すみません。余計なこと……」
「フッ……。もしかしなくても、いない」
嘘だ。
「ええっ? い、いないんですか? 高橋さん。彼女、いらっしゃらないんですか?」
「お前さあ、そう連呼しなくてもよくないか?」
うっ。
「あっ、すみません。つい……」
「だから、さっきも言っただろう。仕事が恋人だから」
何故?
何で、高橋さんほどの男性が……。
「あの……。それは、彼女と別れたばかりだからですか? それとも、誰か好きな方がいらして片思いとか……ですか?」
自分でも、大胆なことを聞いてしまっていると思う。でも、何かが私を突き動かしていて、聞かずにはいられなかった。
「残念ながら、そのどちらでもない」
どちらでもない?
すると、高橋さんはテーブルの上に置いてあった、飲みかけだったらしい缶ビールを一口飲んで、ポケットから煙草とライターを出して煙草に火を点けると、テーブルの上に煙草とライターを置いた。
「俺は、恋愛に向かない男だから」
エッ……。
高橋さん?
「あの、それは、どういう意味ですか?」