新そよ風に乗って ③ 〜幻影〜
「うわっ。本ばっかり……」
その隣の左側の部屋は壁面いっぱいに書棚が並んでいて、難しそうな本が沢山並んでいる。
「これ、全部読んだんですか?」
「1度読み終わっても、偶に読み返したりしてるのもあるし、参考書は使ってるのもあるから」
そうなんだ。
高橋さんは、かなり読書家なのかもしれない。勉強もしているだろうし……。
「あっ。このお部屋は、何の……」
「この部屋は、見なくていい」
エッ……。
今朝、見つけた、もう1つ奥にあったドア。
『この部屋は、見なくていい』 って……。
高橋さん?
何故?
「あの……」
「お茶にしよう」
高橋さんは、そう言ってキッチンの方へと行ってしまった。
何だろう?
もう一度、しまったままのドアを凝視した。
このドアの向こうには、いったい……。
その後、何事もなかったように高橋さんがお茶を入れてくれて、他愛ない話をしながらも、トイレに行った時や、ふとした時に昨日の高橋さんの言葉を思い出しては胸が苦しくなって、グッと奥歯を噛みしめて耐えていた。
『多分……忘れないだろうな』
高橋さんの心の中には、忘れられない女性がいる。
高橋さんにとって、忘れられないその女性はどんな人なの?
聞けるわけもなく、聞いたところで応えてはくれないだろう。否、それ以前に、怖くて聞けない気がする。
忘れられない女性とあの部屋は、何か関係があるのだろうか?
ランチも晩ご飯もご馳走になってしまい、結局、高橋さんに家まで送ってもらい、翌日、月曜日の朝も迎えに来てくれて、明良さんの病院まで送ってもらってしまった。
本来、月曜日は明良さんの外来はないらしいが、午前中は比較的病棟の回診以外は時間が作りやすいということで、外来の空いている診察室で診てもらうことになった。
その隣の左側の部屋は壁面いっぱいに書棚が並んでいて、難しそうな本が沢山並んでいる。
「これ、全部読んだんですか?」
「1度読み終わっても、偶に読み返したりしてるのもあるし、参考書は使ってるのもあるから」
そうなんだ。
高橋さんは、かなり読書家なのかもしれない。勉強もしているだろうし……。
「あっ。このお部屋は、何の……」
「この部屋は、見なくていい」
エッ……。
今朝、見つけた、もう1つ奥にあったドア。
『この部屋は、見なくていい』 って……。
高橋さん?
何故?
「あの……」
「お茶にしよう」
高橋さんは、そう言ってキッチンの方へと行ってしまった。
何だろう?
もう一度、しまったままのドアを凝視した。
このドアの向こうには、いったい……。
その後、何事もなかったように高橋さんがお茶を入れてくれて、他愛ない話をしながらも、トイレに行った時や、ふとした時に昨日の高橋さんの言葉を思い出しては胸が苦しくなって、グッと奥歯を噛みしめて耐えていた。
『多分……忘れないだろうな』
高橋さんの心の中には、忘れられない女性がいる。
高橋さんにとって、忘れられないその女性はどんな人なの?
聞けるわけもなく、聞いたところで応えてはくれないだろう。否、それ以前に、怖くて聞けない気がする。
忘れられない女性とあの部屋は、何か関係があるのだろうか?
ランチも晩ご飯もご馳走になってしまい、結局、高橋さんに家まで送ってもらい、翌日、月曜日の朝も迎えに来てくれて、明良さんの病院まで送ってもらってしまった。
本来、月曜日は明良さんの外来はないらしいが、午前中は比較的病棟の回診以外は時間が作りやすいということで、外来の空いている診察室で診てもらうことになった。