来る日も来る日もXをして
「・・・はい。でもそわそわするような緊張で・・・。」

「ちょっと来て。」

観念した私が明日先輩に手を引かれてきたのは偉人の邸宅だった。無料で見学できるようになっていて建物内は観光客で賑わっているが、裏庭にはひと気がなかった。

そこで立ち止まった明日先輩が体をこちらに向ける。うつむいてまるで自分の中の何かを一点に集め高めているかのように集中している。向かい合ったまま流れる沈黙に耐えきれず『・・・先輩?』と声をかけると何かを決心したかのように顔を上げた。

「俺、更科とちゃんと付き合いたい。」

「え・・・。」

心臓だけでなく、全身が跳ね上がったように感じた。

「自分の気持ち、擬似的なものなのかもしれないと思いつつ、抑えられないんだ。この前もホテルで手を出しそうになっちゃって・・・付き合ってる女性以外とそんなことしたことないのに。」

「・・・。」

───ど、どうしよう。

東雲(しののめ)とのことも、健康的なマッサージって聞いても嫌でしょうがないっていうか・・・独占欲?今回のキスのことがある前から俺は更科に惹かれてたんだと思う。恋愛慣れしてなくて自分の気持ちがはっきりわからなかっただけで。」

「えーと、その、私は・・・私も・・・」
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