薙野清香の【平安・現世】回顧録
「あたっ!」


 身を起そうとすると、崇臣が清香の額をコツンと小突いた。鈍い痛みが走る。清香は崇臣を睨みつけると、恨みがましく額を撫でさすった。


「もう少し休んでおけ。まだ顔色が悪い」


 崇臣はそう言って小さくため息を吐いた。清香の唇が機嫌悪く歪む。


「~~~~休むけど!体勢は変えたいのよ」


 往来の激しい遊園地の中、こんな醜態を晒すのは、清香にとって我慢ならないことだった。けれど崇臣は、清香をその場に押しとどめると、憮然とした表情で目を瞑る。


「それじゃ身体が休まらん。それに誰もお前のことなんか気にしていない。このままでいろ」

(そっ、そうかもしれないけど!)


 有無を言わさぬ物言いに、清香は更に唇を尖らせた。


(まったく、昔から本当に強情なんだから!)


 心の中で毒づきながら、清香が眉間に皺を寄せる。そんな清香の眉間の皺を、崇臣が大きく節ばった指で丹念に伸ばしていた。


(強情だし、強引だし、いっつもわけわかんないし……)


 そんな風に考えていくにつれ、清香の頬は不自然なほどに紅く染まっていく。崇臣は何を考えているのかよく分からない表情のまま、清香をじっと見つめていた。


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