薙野清香の【平安・現世】回顧録
「それで?どんな本を作ろうと思ってるんだ?」


 モニターを覗き込みながら崇臣が尋ねる。


「どんなって言われても……芹香が言い出したことだし」


 清香はそう言って首を傾げた。
 こんな風に“お膳立て”をされるまで、清香の頭の中には、何の構想もなかったのだ。どんな本を作るか尋ねられても、当然すぐに答えることはできないのである。


(この間のノートを本にするってことだけは決まってるけど)


 清香はカバンからノートを取り出しながら、唇を尖らせた。


「ちょっとパソコンを貸してみろ」


 崇臣はそう言って清香の肩を叩いた。清香はコクリと頷くと、デスクの横へと移動する。空いた椅子に腰掛けながら、崇臣はインターネットの検索エンジンを開いた。


「見ろ。これが、素人が自費出版で使う印刷会社やその特色だ」


 清香がモニターを覗き込むと、そこには印刷会社の名前がいくつも並んでいた。本の奥付を毎回チェックしているわけではないこともあって、清香は印刷会社にはあまり詳しくはない。だが、一覧の中には、先輩が利用すると話していた印刷会社の名前も載っていた。


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