薙野清香の【平安・現世】回顧録
「何冊刷るのか、どういったことに力を入れたいかによって、どこに依頼を掛けるかは変わってくる。おまえは写真付きの本を作りたいんだろう?」

「えぇ……そうね」


 崇臣は、清香の返事を聞くと、一覧の中から一社を選び、ホームページをクリックした。


「部数少なめで行くなら、ここが一番安い。色の出方も悪くないとある」

「へーー」


 この男、パソコンだけでなく、こちらの方面に妙に詳しいようだ。清香は素直に感心した。


「部数は……そうねぇ、芹香の分と、私の分と……文化祭のときとかに制作物として並べても良いから、二十部も刷れば良いところかな」


 清香は指を折りながら小さく微笑んだ。過去に、大ベストセラーだったからといって、自惚れるつもりはない。この部数でも多い方だと清香は思った。


「主の分も忘れず確保しろよ」

「……うん!」


 崇臣が重ねて言うぐらいなので、どうやら東條は、本当に清香の本を楽しみにしてくれているらしい。清香は瞳を輝かせながら、崇臣の顔を覗き込んだ。


(嬉しいなぁ!東條さまが私の本を欲しがってくれるなんて)


 ウキウキと目を細める清香を余所に、崇臣は憮然とした表情を崩しはしなかった。


< 64 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop