別冊・ダブルブルー
「で?どうしたの?」


ふいに青さんが、後ろから私を抱き締めた。


洗面台の前にかかる、大きな鏡の中には私の首もとに頬を寄せて微笑んでいる青さんの姿が映っている。


その表情はひどく、やさしくやわらかい。


当たり前のことながら、後ろから私を抱く青さんのそんな表情を見たのは初めてで。


それは、どの映画やドラマの中の青さんとも違くて。


あれだけ、綺麗な女優さんを抱き締めてキスをしている姿に、嫉妬心を抱いていた、のに。


今までのそんなイヤな嫉妬心を吹き飛ばしてしまうのには十分すぎる、そんな表情は、だから。


ズルい、ズル、すぎる。


胸のうちでちいさくつぶやいたつもり、だったの、に。


「なにが…?」


少し首をかしげてなお、私の耳元に頬を寄せる青さんと、鏡越しに目があった。









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