別冊・ダブルブルー
後ろで、ドアが開く音がしたけれど、想いが溢れてしまって、振り返ることが出来ない。


「蒼ちゃん」


青さんが、私を呼んでくれる声がする。


その声はいつも、優しさと思いやりに満ちている。


いつも、私を導いてくれる。


もういちど、深呼吸をして、汗をかいているアイスコーヒーのグラスを持ち上げた。


…なんて、言えばいい?


どうすれば、伝わる?


逡巡する思いと、冷たくなってゆく、てのひら。


「蒼ちゃん」


振り向けないままの私を、優しく呼んでくれる青さんの声がする。


それだけで、もう。


それだけ、で。






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