ひと駅分の彼氏
☆☆☆

優花里が悪いんじゃない。


わかってる。


優花里はちゃんと私に前を向いてほしいだけなんだ。


だから、私が委員会の仕事をいつもどおりこなした時は嬉しそうな顔をしてくれていた。


それは両親も同じで、私が勉强机に座っていると安心したような表情をしてくれる。


それもこれも、ひと駅分だけ真琴に会えていたからだった。


だから私はもう1度頑張ろうと思えたんだ。


いつの間にか外は暗くなり、階下からは晩ご飯の匂いが漂ってきている。


私はのそのそと起き上がると怠慢に制服を着替え始めた。


すべの動作が億劫で、泣いたせいで目元がすごく重たくなっている。


「真琴、会いたいよ」


小さく呟くとまだ涙が滲んできた。


明日、真琴の49日が来る。


それから先も真琴は私とひと駅分だけ会ってくれるだろうか?


それとも……。


私はギュッと下唇を噛み締めた。


もしも明日が最後になるなら。
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